P3P・小田桐×女主人公 if

君と僕をつなぐ欠片 2


寮のラウンジで不意に近寄ってきた美鶴に手招きされ、祥子は美鶴の部屋へ向かった。
「最近、おかしいんだ」
「……何がですか?」
祥子は美鶴の言いたいことを何となく理解していたが、あえて聞きかえす。
美鶴のほうも、祥子がわざとはぐらかしたことに気づいたのだろう、深いため息とともに答えが返ってきた。
「うちの副会長が、だ」
「小田桐くんが、どうかしたんですか?」
できるだけ何気ない風を装ったが、胸の奥ですこしだけ心拍数が上がったことを自覚した。
祥子の動揺は、とりあえず美鶴に見透かされることはなかったらしい。
高価な調度品に囲まれ、腰掛けている美鶴はまるで女王のようだ。
その自覚はないのだろう、美しい王はじっと祥子を見据えている。
「最近、生徒会室に来ないのはどういうわけなんだ?」
「いろいろと忙しくて」
あいまいに笑う祥子に、向けられる視線は鋭い。
忙しいというのは嘘ではない。けれど、生徒会室を避けている本当の理由は、忙しさとは別のところにある。
それをいま、ここで美鶴に打ち明けるつもりはなかった。
しばらくの沈黙。痺れを切らしたのは祥子のほうだった。
深追いするのは弱みを見せることだとわかっていながら、こらえきれずに口を開く。
先ほどはぐらかされた問いの答えが、どうしても知りたかったからだ。
「小田桐くん、どうしてますか?」
案の定、目を細めた美鶴がかすかな笑みを浮かべた。満足げな様子に、苦いものを感じないでもない。
答えてくれないことも覚悟していたが、美鶴はすんなりと情報をくれた。
「そうだな、ぱっと見だけなら以前と変わりないな。
表立った仕事はきちんとこなしているし、周囲の信頼もすこしずつだが得ているようだ」
ほっとする反面、胸が焦げるように痛む。
彼は彼自身の新しいスタートを、きちんと切っているのだ。祥子のいない日常でも。
「だが、細かいミスが目立つ。自分の持ち物をやたらと失くしたり、
ぼんやりしていて指示を聞き逃すことも増えている」
この間は、資料が袋とじになっていたな、とつづけられた言葉に、
祥子はついふきだしてしまい、美鶴にじろりとにらまれる。
「生徒会に顔を出す気はないのか?」
小田桐に会え、とは言わないのがこの先輩なりの気遣いだと祥子は知っている。
不器用なところもあるが、優しい人なのだ。祥子はそっと首を振った。
「いえ、また行きます」
「いつ?」
性急な問いかけに、祥子はもう一度笑って見せた。
「そのうちに」


祥子の携帯に小田桐からメールが届いたのは、翌日の夜だった。