P3P・小田桐×女主人公 if

君と僕をつなぐ欠片 3


屋上、という場所を選んだのは人目につきにくいからだ。
祥子を待つあいだ、落ち着かない気持ちで小田桐はフェンスに手を置いた。
呼び出すつもりはなかった。
元気にしているか、とそれだけを確認するつもりで送ったメールに、
祥子からの返信はコール音で戻ってきた。
電話越しに聞く彼女の声は久しぶりで、元気だと言うわりに声にはいつもの覇気がないような気がした。
だから。
(……ただ、心配だっただけだ)
友人として小田桐に許されている範囲内の行為だと、自分に言い聞かせる。
けれど、範囲とはそもそも何だろう。
彼女に接するとき、境界線を、高い壁を感じるようになったのはいつからか。
そして、その壁をときに乗り越えたい気持ちになるのは。
(僕は……)
そのとき屋上の扉が開いて、手を振りながら祥子が歩いてきた。
他に誰もいないのに、小田桐には彼女が自分に向かって手を振っているとはまるで実感できなかった。
それくらい、見慣れたはずの祥子の姿がまぶしく見える。
小田桐の戸惑いに気づかず、祥子はいつもの明るい笑みを浮かべた。
「おはよう、小田桐くん」
「……ああ」
「どうしたの? なにか話があるって」
頭をかしげた祥子のなめらかな首が視界に入って、小田桐はあわてて目をそらす。
普段から髪を上げているのだから、祥子の首元なんていまはじめて見るわけでもないのに、
なぜこんなに動揺してしまうのか。
「小田桐くん?」
不思議そうな祥子の声に、小田桐ははっと我に返った。
呼び出した側の自分が不審な態度をとっていては、彼女を困らせてしまう。
「いや、すまない。話というのも、大したことではないのだが」
「いいよ、なんでも言って」
「その……、次の生徒会の活動日には、出席してもらえないか?」
「次の生徒会って、なにかあるの?」
手伝いがほしいという意味にとらえたのだろう、祥子がきょとんとしている。
行事のないこの時期、生徒会の活動が忙しくないことは彼女も知っているのだろう。
大きな瞳がくるくると動きながら、自分を映している。
濁りのないその色に怯みながら、小田桐はもう一度口を開く。
これが、自分なりに考えて出した答えだった。
「特別なことはなにもない。ただ、松永君がいないと僕が困るんだ」
「……どういう意味?」
「仕事にならないんだ。いや、生徒会のことだけじゃない。
授業も、思うように身が入らなくなった。ただ君に逢えない。それだけのことで」
祥子からの返事はない。きっと呆れているのだろう。
しかし思い悩んだ数週間を思えば、いっそ清々しい気持ちになった。
「……我ながら情けないことを言っていることは自覚している。
すまない、こんな話を聞かせるために、松永君の時間を煩わせて」
立ち去ろうとした小田桐の手を、引きとめる力があった。
祥子の細い指と真剣なまなざしが、小田桐の足を止める。
「小田桐くんのために、私ができることがあるならなんでも言って」
「松永君……」
柔らかい指の感触は、見かけの予想に反してひんやりと冷たい。
祥子が冷え性だという話は聞いたことがないはずだ、と場違いなことを考えていると、
お互いの腕のぶんだけ開いていた距離を、祥子がゆっくりと縮めた。
彼女は笑っていない。まっすぐに小田桐の目を撃ちぬき、脳を揺さぶる。
「私、あなたのためなら何でもするから」
それは、小田桐の理性の鍵を引きちぎる言葉だった。
勢いに任せて祥子の手を引き、彼女にすがるように抱きついた。
反射行動と言ってもいい。
事実、小田桐は衝動だけで行動した己に狼狽した。
けれど一つだけ、長らく行き詰っていた問題に対する解を見つけた。
ああ、そうか。
「……好きなんだ、君が」
口に出してみればひどく簡単な答えだった。
だからあれほど、彼女の存在に執着していたのだ。
小田桐が握っているのとは逆の手で、祥子がそっと小田桐の肩を抱き返した。
「私もだよ」
予想外の返事に、小田桐がびくりと身体を揺らす。
まさか、という思いがさらなる動揺を呼び、小田桐はとっさに身を離そうとした。
しかし祥子はその反応ごと包み込むように小田桐の肩を引き寄せる。
耳元にささやかれた声は、かつて聞いたことがないほど掠れていた。
「小田桐くんがそう言ってくれるの、ずっと待ってた」
「松永、くん……?」
まさか泣いているのかと、寄せていた身体を無理に離すと、小田桐の目の前でつややかな唇が笑った。
「大好き」

自信ありげに笑みをきざむ、彼女の目元が潤んでいたことは小田桐だけが知っている。











おまけ。




ほんとはね、自信なんかなかったの。
だってあのとき、ライターをくれた小田桐くんは私を信頼の目で見ていた。
その瞳の中に、恋の欠片すら見つけられなかったくらい。
だけど私はどうしても小田桐くんが欲しかったから。友達じゃないあなたが欲しかったから。
すごく勝率の低い賭けをしてる気分だったって言ったら、怒る?
でも、会えない時間があまりに辛くて、私が先に負けちゃいそうだったんだよ。
だから、ねぇ。

「もっと、好きって言って」







t o n e のニイラケイさんから頂きました!

小田桐の古風な性格とプライドのことも考えて、
女主人公なりに「彼から告白した」という建前を作ろうとしたっていう側面もあるそうです。

なるほどなー。


……それにしても。
ゲームやったことない+私の微妙な説明で
ナゼこんな萌えるお話が書けるんデ・ス・カ!

私好みの小田桐です!にぶすぎる!なにこのヘタレ☆
最後、おまけの祥子がかわいすぎ…!!


こんなすてきなお話をほんとにありがとう…!!
むしろ私が「なんでも言って」って感じ←台無し。

2010.05.09